1 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:49:04.59 ID:4BqLDWoJ0
(カフェ) 

カチャ 

薫「お疲れ様です、先生。遅くなりました」ペコリ 

P「お疲れ様。いいよ、もっと遅くなるのを覚悟してたから」 

薫「あら…そんなに待っていてくれるつもりだったんですか?」 

P「そらまあ、仕事の話だし」 

薫「ふふ、メールとか電話でも連絡はできるのに♪」 

P「そういうなよ。会議やら、後輩の指導やらで忙しい中での貴重な休憩時間になってるんだ。薫との打ち合わせは」 

薫「私で休まります?」 

P「身も心も休まる」 

薫「ヒーリング料金請求しようかな」 

P「やめなさい。ちひろさんじゃないんだから」 

薫「ふふふ」

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2 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:49:28.87 ID:4BqLDWoJ0
P「…にしても変わったよなあ」 

薫「はい?」 

P「子供の成長は早いって話。ついこの前までひまわりを見てキャッキャしてたと思ったのに。もう大学生だ」 

薫「ひまわりは今でも好きですよ。見ればキャッキャします」ボリボリ 

P「それひまわりの種! 愛が歪んでるゥー!」 

薫「♪」キャッキャ 

P「満面の笑みでひまわりの種を貪るんじゃない」 

薫「食べます?」スッ 

P「どうも」ポリポリ
3 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:50:04.42 ID:4BqLDWoJ0
薫「私はともかく、先生はジジ臭くなりましたよね。口を開けば『大きくなった』ですし。まったくもうセクハラですよ」プンスカ 

P「成長したなって話だからね?」 

薫「ええ、成長したという話ですね。何がとは言いませんけど」 

P「…」 

チラリ 

薫「先生、視線が丸わかりですよ?」 

P「な、何の話かな?」 

薫「セクハラ」ズバッ 

P「ぐっ…男を手玉に取るような女になりそうで怖いな」グサ- 

薫「ふふふ、川島さんや楓さんに色々教わりましたから♪」 

P「ああもう。あの子らは…」ハァ
4 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:50:33.59 ID:4BqLDWoJ0
薫「あの子扱いなんですねぇ。確か同い年くらいでしょう?」 

P「手間がかかったからな。特に楓さんは」 

薫「私はどうでした?」 

P「言わずもがな」 

薫「いい子だったんですね」 

P「待ちなさい。高校時代にやさぐれていたのをお忘れか」 

薫「かおる。ずっといい子だったよー?」 

P「おらァ! 都合のいい時だけ純真無垢を装ってんじゃねえぞ!」 

薫「はんっ。純真無垢を押し付けたのは誰だっての」 

P「黒いのがまた出てるよ。抑えなさい」
5 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:51:00.39 ID:4BqLDWoJ0
薫「だってさー、高校生にもなって『父の日に大好きなお父さんにおにぎりを作ろう!』みたいな仕事ばっかりなんだよ? 思春期の気難しい時期だもの。心の綺麗な子を要求され続けてたら、そりゃ心だって摩耗するよー! 息苦しいよー!」 

P「完璧な笑顔でやりきってたけどな」 

薫「仕事ですから」 

P「その点は本当にすごい。荒れに荒れた後は『ご心配おかけしました』からの猛勉強。今じゃ敬語が板についてる礼儀正しい大学生だ」 

薫「荒れてみたかったんです。今では荒れるのなんてかっこ悪いなと思いますけど、荒れてみたかったんです」 

P「こっちは胃が痛かったよ」 

薫「おにぎり作ればよかったかな」 

P「え、追い討ちをかけたかったの?」 

薫「そりゃまあ」
6 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:52:00.63 ID:4BqLDWoJ0
P「恨まれるようなことしたっけ?」 

薫「仕事の内容」 

P「それは俺にも非があるな。徐々に大人っぽい仕事増やしていこうとは思ってたけど…タイミングがいまひとつわからなかったんだ」 

薫「それから、よりにもよって1番荒れてる時期の誕生日に出張でしたよね」 

P「プレゼント送っただろ」 

薫「覚えてません。あの日は悲しさと虚しさと怒りしかありませんでした」 

P「盛りだくさんだね。負の感情のフルーツバスケットだね」 

薫「その次の日、人生で初めて仕事をサボろうと思って河原でたそがれていたんですけど…」 

P「うん」 

薫「迎えに来やがった」 

P「悪かったな」 

薫「先生。あれはずるいと思います」 

P「放っておいた方がよかった?」 

薫「知りませんすっごい嬉しかったです」フン 

P「本音出てるね」
7 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:52:54.59 ID:4BqLDWoJ0
P「ところで先生って呼び方はいつまで経っても変わらないよな」 

薫「今さら変えても違和感しかないでしょう。変えるタイミングはとうの昔に過ぎ去ってしまいましたよ」 

P「そうか?」 

薫「ええ、それに変えなくてもいいじゃないですか。私の50歳になる叔父にも『あっくん』と呼ぶ友人がいますよ」 

P「あっくんかぁ。でも、呼び方を急に変えると違和感があるのはなんとなくわかるよ」 

薫「そうです。『あっくん』から『佐藤』に変わったらショックでしょう?」 

P「ショックだろうな」 

薫「ほら」
8 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:53:43.52 ID:4BqLDWoJ0
P「俺が龍崎さんに変えたら怒る?」 

薫「…え?」 

P「試してみよう。龍崎さん」 

薫「かおる。わるいことしたかな?」ハイライトオフ 

P「幼児退行はやめてェ。ホントに怖いから!」 

薫「もう一度、龍崎さんと呼んだら泣きわめきます」グスッ 

P「脅すんじゃないよ」 

薫「今の私なら恥を捨てることくらい躊躇いなくできるんですから」キッ 

P「本当にやるなこいつ」 

薫「苗字呼びは断固反対ですけど、薫ちゃんとなら呼んでもいいですよ」 

P「薫ちゃん」 

薫「大変です先生。違和感しかありません」 

P「俺も違和感しかない」 

薫「やはりこれまで通りがいいですよ。私は先生。先生は呼び捨てです」 

P「OK。薫」
9 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:54:29.03 ID:4BqLDWoJ0
薫「はい、先生。お腹が空きました!」ピッ! 

P「脈絡がないな。つーか、ひまわりの種食べてたじゃん」 

薫「はんっ。あれくらいで飢えた女子大生の胃を満たせるとでも? 肉を持ってこい!」バ-ン! 

P「口調」ガシッ 

薫「あいたたァ! 生意気言ってごめんなさい! アイアンクローはやめてください! パワハラで訴えますよ!」 

P「謝ってるようで脅してんじゃねーか! それはさておき何の肉が食べたいんだ?」パッ 

薫「松坂牛のステーキでいいですよ」 

P「『で』じゃないよ」 

薫「気分的にハンバーグですかねぇ」 

P「いいね」 

薫「というわけで。今から私のアパートに来ませんか? 作りますよ」 

P「さすが料理好き」 

薫「シェフと呼んでください」フフフ 

P「よ! 龍崎シェフ!」 

薫「また苗字で呼んだ~!」ヒ-ン! 

P「本当に泣くんかい」
10 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:54:59.61 ID:4BqLDWoJ0
(薫宅) 

薫「ちゃっちゃと作るので待っててください。その辺にある漫画読んでていいですよ」 

P「これ読んだことあるな」ペラリ 

薫「菜々さんから借りたんです」 

P「あー、だからだ。俺も勧められて読んだんだよ」 

薫「菜々さんの青春だそうです」 

P「いま現在17歳なんだから青春真っ只中じゃない」 

薫「だったらいいんですけどねー。あ、先生、チョコは入れます?」 

P「何に?」 

薫「ハンバーグに」 

P「チョコを受け入れてくれる料理はカレーくらいのものだよ」 

薫「冗談です。無難に作りますよ」 

P「知ってる」
11 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:55:29.74 ID:4BqLDWoJ0
薫「先生覚えてます? 私、事務所で初めておにぎりを作った時にチョコを具にしたんですよ」 

P「そんなことあったっけ?」 

薫「ありました。でも、先生は完食してくれたんですよねえ」 

P「さすが俺」 

薫「あの後、自分で食べてみて『何だこれ!』って衝撃を受けたんですよ。それ以来、きちんと人様に美味しいと思ってもらえるようなものを作るようになりました」 

P「どこかのいちごパスタに聞かせたいよ」 

薫「そういえばありすちゃん。この前もいちごパスタの研究してましたよ」 

P「いくらアレンジを重ねても美味しくはならないと思うんだ」 

薫「私もそう言ったんですけどね。『いちごパスタの可能性を信じています』と聞く耳を持たなくて」 

P「また食べなきゃ駄目なのかぁ…」 

薫「…」
12 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:55:57.14 ID:4BqLDWoJ0
薫「前から思ってましたけど、律儀に食べてあげることないんじゃないですか?」 

P「可哀想じゃん」 

薫「ふん。そうやって優しくするからつけ狙われるんですよ。はいどうぞハンバーグです」コトリ 

P「美味しそう」 

薫「どうぞ食べてください。不味かったら不味いとはっきり言ってくださいね。先生は何を食べても『美味しい』なんですから」 

P「きちんと審査しろと?」 

薫「そうじゃなくて本音を言ってくださいよ」 

P「…よかろう」 

スッ...モグモグ 

薫「ど、どうですか?」 

P「美味しい」モグモグ 

薫「しまった。本音かどうかわかりません!」ガ-ン! 

P「いや、本当に美味しいっての」モグモグ
13 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:56:37.19 ID:4BqLDWoJ0
薫「嘘付いたら針千本ですよ」 

P「おらっ! 疑うなら自分で食べろや!」グイッ 

薫「ぐぅ。無理矢理口の中に押し込むのは行儀がっ!」 

モグモグ 

P「どうよ?」 

薫「流石、私です。最高」ゴクン 

P「だろ?」 

薫「ていうか私の分もあったんですから。先生の分をくれなくてもよかったのに」ゲプ- 

P「そこは別によくない?」 

薫「駄目です。フェアじゃありません。はい、私が食べた分のお返しです」スッ 

P「皿の上置いておいて」 

薫「口を開けてください」 

P「…」
14 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:57:29.45 ID:4BqLDWoJ0
薫「何しているんですか。あーんですよ」 

P「あーん」 

薫「あはは。豚さんみたいだー♪」 

P「オラァ! 時子みたいになれると思うんじゃねぇぞ!」ガシッ! 

薫「ごめんなさいっ! 調子に乗りました! 照れ隠しなんですごめんなさいッ! ほっぺを掴まないでェ!」 

P「わかればよい」パッ 

薫「あいたた…」 

P「はい」ア- 

薫「え」 

P「食べさせてくれるんじゃないの?」 

薫「…うん。どうぞ」スッ 

パクッ 

P「美味しい」モグモグ 

薫「でしょう」 

P「お代わりはある?」 

薫「ありますよ。台所にあるのでどうぞ」 

P「へーい」
15 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:57:58.61 ID:4BqLDWoJ0
(しばらくして) 

P「あー、もう動きたくない」グデ-ン 

薫「お腹出てだらしがないですね。ところでアイス食べます?」 

P「食う」グデ-ン 

薫「どうぞ」 

P「いただきます」ムシャ- 

薫「いただきまー♪」ムシャ-  

P「…それだけは変わらないよな」 

薫「それとは?」 

P「『す』じゃなくて伸ばすやつ」 

薫「ああ、癖になっちゃってるんですよ。直そうとは思うんですけど…」
16 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:58:42.05 ID:4BqLDWoJ0
P「あいさんはそれ聞くと癒されるって言ってたぞ」 

薫「そうなんですか?」 

P「うん。『リラックスのスイッチになっているんだ』ってさ」 

薫「じゃあこのままでいいかな」 

P「軽いなぁ」 

薫「あいさんにはお世話になってますからね。特別です」フフフ 

P「俺が同じこと言ったら?」 

薫「持ち帰って検討します」 

P「あ、それ。お断りのパターン」
17 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:59:30.10 ID:4BqLDWoJ0
薫「プロデューサーさんはこれを聞いてどう思っているんですか?」 

P「どうとは思わないけど…安心するかな」 

薫「安心」 

P「変わらない部分があると安心するだろ。別に変わることが嫌ってわけではないけど」 

薫「そう…ですね」ム- 

P「変えても変えなくても大きな問題じゃないよ。あいさんは少し寂しがるだろうけど。それだけだろ」 

薫「ふむ…私がギャル風メイクをしたら、あいさんはどんな反応するんでしょう。エイプリルフールにやってみようかな…♪」フフフ 

P「下手したら卒倒するからやめなさいな」
18 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 22:59:59.76 ID:4BqLDWoJ0
(しばらくして) 

P「じゃあ帰るよ」 

薫「もうちょっとゆっくりしていけばいいのに…」プ- 

P「一回事務所に戻らないといけないからな。そうもいかないんだ」 

薫「明日の予定は?」 

P「休み」 

薫「私も休みです」 

P「そうかあ」 

薫「…」 

P「…」 

薫「…」ジ- 

P「…どこか行く?」 

薫「おごりなら♪」 

P「割り勘な」
19 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 23:00:29.65 ID:4BqLDWoJ0
薫「ひどいですね。仮にも私は学生ですよ?」 

P「お金ならガッツリ稼いでるだろ」 

薫「おかげさまで売れましたからね」 

P「俺のプロデュースのおかげだな。稼いだ分をむしろ奢ってくれよ」 

薫「嫌です」 

P「即答かい」 

薫「ふふふ♪」 

P「…」 

薫「…」 

P「それじゃ、また明日」 

薫「ええ。また明日…あ、最後に」 

P「何?」
20 : ◆hAKnaa5i0. [saga]:2018/03/15(木) 23:01:19.90 ID:4BqLDWoJ0
薫「変わるだの変わらないだのって話をしていましたけどね」 

P「うん」 

薫「私は先生のことをずっと変わらずに信頼してますから♪」 

P「知ってる」 

薫「今の言葉に対する感動は?」 

P「ないよ。嬉しいけど」 

薫「してくださいよ!」 

P「はい。おやすみ」 

薫「ふふふ…おやすみなさい♪」 

終わり


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